憧れの職業としてランキングに上がることも多い教員という職業。やりがいも大きく、生徒たちとのコミュニケーションの中でしか得られないものも多くあります。
しかし、公立の教員として勤めている人の中には、職場の人間関係や、残業の多さに悩んでいる人もいるでしょう。
私も新卒で公立高校に勤務し、上記のような悩みに直面しました。その状況を変えるため、その後私立高校に転職。現在は同じ高校の教材制作に携わる部署に所属し、毎日楽しく勤務しています。
いわゆる「普通の就職活動」の経験がなかったことは大きな不安要素でしたが、転職したことで、より充実した日々を手にできました。
本記事ではこのような私の経験も交えつつ、公立高校と私立高校はどういった点が異なっているのか、転職活動の流れを解説していきます。
読み終わった際には、悩みが解決し転職活動の始め方を知ることができますので、ぜひ最後までお読みください!
現役教員の視点|公立高校と私立高校の違い
ここからは私が公立高校より私立高校の方が良いと感じている点について、私自身の体験もふまえて3つ説明します。
- 違い①:学校の設備
- 違い②:ICTツールの浸透具合
- 違い③:給与
それでは早速説明していきますね。
違い①:学校の設備
学校の設備は、圧倒的に私立高校の方が充実している可能性が高いでしょう。
公立高校は自治体が運営しているため、設備の水準はどこも大きく変わりません。そのため、公立高校は入学金など授業料以外も、費用負担が少なくなっています。
自治体によって多少状況は違うかと思いますが、私が勤めていた公立高校は立地の問題もあって設備がかなり心もとない状況でした。清掃も基本生徒が行っており、築年数の長さからきれいは言えない部分があった点も事実です。
一方、現在勤めている私立高校では、保護者の費用負担が大きくなっている分、生徒も職員も快適な環境で過ごせています。冷暖房の効いた空間で働けることや、お手洗いがきれいであることのありがたさを噛み締め、日々の前向きに仕事へ取り組んでいます。
違い②:ICTツールの浸透具合
ICTツールを使いこなした教育をしたいと考えるのであれば、私立高校がおすすめです。
先ほどの費用面と関連し、公立高校はまだまだICT設備が整っていないところが大半。昨今になって「GIGAスクール構想」などが話題になっていますが、ほとんど使えていないのが現状であると現在公立高校に勤める元同僚も話していました。
一方、私立高校は学校法人が運営しているため、学校が独自に教育方針を打ち出せます。そのため、ICTツールを駆使した最先端の教育を提供している学校もありますよね。
私も、公立高校に勤めていた頃、自分なりにICTツールを使った教育に挑戦しようと四苦八苦。当時、プロジェクターを使った授業を実施しただけで学校のホームページ担当に任命されるほど、周りにICTツールを使っている教員はいませんでした。
現在はさまざまな生徒の特性にも合わせやすい、ICT機器の浸透した空間で働いています。紙文化ならではの良さもありますが、より柔軟にオリジナリティのある教育に挑戦したいと考えている人には、私立高校の方針がフィットする可能性が高いと言えます。
違い③:給与
私立高校であれば、自身の頑張りが給与に反映されるので、よりやりがいを感じられるでしょう。
公立高校の教員は地方公務員ですので、経験年数に応じて基本給の金額が上がることはご存じの人も多いのではないでしょうか。退職金やボーナスなども安定して受け取れる点は、公立高校の教員のメリットです。私が新卒で入職した際も、満額ではありませんでしたが入職直後の6月ですでにボーナスを受け取りました。
しかし、公立高校の教員の場合は残業・休日出勤がある場合も、給与額は変わりません。代わりに、給与の4%に該当する「教職調整額」が支給されていますが、1ヶ月の残業時間を考えるとわずかな金額です。
民間企業と同じ扱いとされる私立学校の教員は、基本的に残業代・休日出勤にも手当が支給されます。また、若くても昇給のチャンスがあったり、役職につくことで手当を受け取れるのはやる気につながりますよね。自分のスキルが評価され、給与に反映される場で働きたいと考える人は、私立高校がおすすめです。
【実体験】公立高校の教員としての経緯と現実
ここからは、そもそもなぜ私が公立高校の教員となった後、辞めることを決意したのかについてお伝えしましょう。
公立高校の教員になったきっかけ
私が公立高校の教員になったのは、経済的に豊かな一部の子どもたちだけではなく、「より多くの子どもたちと関わりたい」と考えたのがきっかけです。
大学生になってから本格的に高校教員を志した私は、3年生の秋には予備校に通い始めました。そして、第一志望の都道府県で教員になるという夢はかなわなかったものの、別の都道府県で無事教員採用試験に合格し、卒業後すぐに公立高校の教員として働き始めたのです。
当時、自分と同じように教員を目指す友人の中には最初から私立高校で働きたいと考えている友人もいましたが、大半は「自分の母校が私立で、そこで働きたい」と考えているからでした。
公立高校出身の私が想像する「私立高校の教員」とは、「土曜日も出勤しないといけなくて大変そう」「転勤がなくて勤務先が変わらないということは、メンバーによってはずっとしんどい状態が続くかも」というようなふわっとしたものばかり。
転勤について、実際は、私立高校でも全国に校舎があったり提携校があったりすると十分に発生する可能性があります。現在私が勤務している学校も、全国へ転勤の可能性がありますので、上記のような心配は必要ありませんでした。
公立高校の教員を辞めたきっかけ
私が公立高校の教員を辞めた理由は、大きく分けて2つあります。1つ目は職場の人間関係、2つ目は勤務環境です。
1つ目の職場の人間関係について、これは私と他の教員との関係ではなく、他の教員同士の関係が問題でした。
職員室で教員が教員を怒鳴る、自分達にとって都合のいい教員のランキングをつけるなど、これが教員と呼ばれる立場の人たちの行動なのか、と絶望したことを覚えています。当然、尊敬できる素敵な方もいらっしゃいましたが、それはほんの一握りでした。
2つ目の勤務環境については、とくに勤務時間の長さがネックになっていました。勤務開始時間は8時半からでしたが、8時から役割があたっていることは当たり前。そもそも生徒の授業開始が8時半からでしたので、勤務開始時間が8時半に設定されているのもおかしな話です。
また、行事がある際は朝5時に出勤したり、夜9時に退勤したりしていました。当然、公務員ですので残業手当はありません。例えば夏場、勤務終了時間とされている17時には冷房のスイッチがオフに。
どちらも自分の努力での改善が難しいポイントであり、入職して間もない頃から気になっていたポイントであったため、辞める決定打となりました。
公立高校から私立高校の教員へ転職を決意|周囲の反応
ここからは、私が公立高校の教員を辞めると周りの人に伝えたときの反応を下記の3つ紹介します。
- 親に伝えたときの反応
- 友人に伝えたときの反応
- 職場の同僚に伝えたときの反応
では、順番に紹介していきますね。
親に伝えたときの反応
あえてギリギリまで伝えないという選択肢を取ったため、直前になって伝えたところ、大変驚いていました。また、「公務員を辞めるのは勿体無い」という話は何度もされましたが、次の職場が決まっているということもあり、すぐに気持ちも落ち着いたようです。
辞めると伝えるにあたって、一番伝え方に悩むのは親であると考えている人もいるのではないでしょうか?
私は、働きながら転職活動を進めていたこともあり、転職先が決まったタイミングで「今の仕事は辞めて、4月から◯◯で働く」と伝える、と決心していました。
そして、この選択をしたことにより、親からの引き止めの対応をしたり、その引き止めで再度転職するかどうかを考え直したりをする時間はゼロ。転職活動に集中できました。
友人に伝えたときの反応
社会人3年目ということもあり、周りには一足先に転職している友人も。転職経験者である友人に伝えると、おすすめの転職エージェントを教えてくれるなど、あたたかくサポートしてくれました。
転職経験のない友人の中には、親と同様「公務員を辞めるのは勿体無い」と話す友人も。しかし、「3人に1人が、新卒3年以内に辞める」という価値観が比較的当たり前になっていることもあり、ほとんどの友人は新しい門出を応援してくれ、大変心強かったです。
職場の同僚に伝えたときの反応
私が辞めることを残念がってくれる先生も多く、今でも定期的に連絡をとっている人もいます。ちなみに、退職する職場で転職先を聞かれても、原則として答える必要はありません。
法律上の問題も義務もありませんので、今後もお付き合いを続けたい相手などに対しては転職先への入社後に報告するのが良いでしょう。
また、私の場合は、校長に伝えた後、関わりの深い先生方に個人的に挨拶をしに行きました。上司へ伝える際は口頭で約束の上、1対1で話ができる場で話すようにしましょう。
【私立への転職活動】現役で働きながら転職成功の経緯
ここからは、忙しい現場で仕事をしながら、どのように転職活動を進めたのか解説していきます。
【転職17ヶ月前】新卒2年目で転職を視野に
冒頭でお話しした理由をきっかけに転職を決意したのは新卒2年目の頃。まずは転職するかどうかを決めるために、同じような気持ちの人がいるコミュニティに足を運ぼうと決めました。
当時は、「3年は続けたほうがいい」という一般論や、当時担任を持っていた生徒たちの卒業を見送るなら、あと2年間は続けないといけないという学校ならではの区切りが悩みのタネでした。
【転職15ヶ月前】転職セミナーに通う日々
転職の気持ちを固めるにあたり、以前から気になっていた、転職を検討している人たちが夜に集まるセミナーへ。忙しい日々の中、通うのが大変な日もありました。
しかし、転職するのかしないのか、どんな職場でなら気持ちよく働けるのかなどを考えたその時間は、今でも大切な思い出です。さまざまなバックグラウンドの人たちが集まり、「先生」ではなく名前で呼ばれるのも新鮮でわくわくしました。
ちなみに、そこで具体的な自分の未来の計画を立てるワークに取り組んだのですが、その際に来年度の末には転職すると決め、無事そこで立てた計画通りのタイミングで転職できたことも印象的です。
【転職8ヶ月前】初めて転職エージェントと連絡
いつから転職活動を始めるべきかすら明確でなかった私は、ひとまず転職エージェントのサイトを一通り眺めていくつか登録しました。
そのうち、1つのエージェントからすぐに連絡があり、電話で転職したい時期などを伝えたところ、求人の情報が出るタイミングなども考え、年明けから始める方向で決定。
いよいよ本格的に自分が動き出す時期が決まりドキドキしつつも、残る人たちに引き継ぐための資料を作るつもりで、日々の業務に取り組みました。また、夏休み後の校長との面談で、辞める可能性がある旨をそれとなく伝えたことも、振り返ってみればいい判断だったと思います。
【転職3ヶ月前】転職活動開始
年が明けてすぐ、早速転職エージェントと直接話をするにあたり、職務経歴書や履歴書の準備。特に職務経歴書は煩雑な仕事内容をどのように記載すればいいか、エージェントの方が丁寧にアドバイスしてくださいました。
また、私がお世話になったエージェントの方は休日も対応可能とのことで、時間の調整もしやすかったです。また、電話についても、昼の比較的対応しやすいタイミングにかけてきていただきたい旨をお伝えしたところ、その通りに調整してくださりました。
利用するエージェントによって対応は異なりますが、短い期間で転職活動を成功させるには、信頼できるエージェントの方を見つけ、サポートを受けるのがおすすめです。
実際に転職活動を開始してからは、転職サイトを眺めたり、メールで連絡いただいた企業の求人情報を眺めたりしながら過ごしました。その中でいくつかの企業に応募し、1月末には現在勤めている学校の一次面接が決まったのです。
【転職2ヶ月前】怒涛の面接ラッシュ
1ヶ月間で、現在勤めている学校の最終面接まで全てこなし、慌ただしく過ごした2月。1次面接と2次面接は職場から帰宅後、自宅からWeb会議ツールを使って臨みました。
面接実施日については、「○時には退勤する」というのを事前に同僚へ伝え、時間までに帰宅できるようにしていました。
また、最終面接のみオフラインで、日程を知らされたのはなんと面接日の2日前。本社まで新幹線で向かう必要があり、気忙しかったですが、本命ということもあり、その日は急遽午後のみ休暇を取得しました。
現在は当時よりもWeb会議ツールが発達し、全ての面接がオンラインで完結する場合もあります。しかし、面接の日程は企業の都合によって左右されますので、ある程度余裕を持ってスケジュールを組むようにしましょう。
【転職1ヶ月前】内定獲得、退職へ
3月に入ってすぐに内定の連絡があり、そこから大慌てで退職に向けての手続きを進めました。そこから退職金や源泉徴収に関する書類を記入し、他の同僚に挨拶をし、月末にはきっちり有給休暇も消化して無事に退職。
紙媒体が多く、書類の整理に時間を要したので、3月に入ってからはあっという間に時間が過ぎ去りました。勤務年数が長い人ほど退職時の身の回りの片付けに時間がかかりますので、注意しましょう。
まとめ|私立高校の教員はメリットだらけ!計画的に転職活動をしましょう
本記事では、公立高校と私立高校の違いについて触れ、実際に転職に至った理由や、現役で働きながらどのようなスケジュールで転職活動をしていたか紹介しました。
現在公立高校に勤めており、「転職を考えているが、教育には携わり続けたい」という人にとって、私立高校という選択肢は大変おすすめです。ただし、私立高校によっては教員募集のスケジュールが厳密に決まっている場合もありますので、各学校のホームページ等を必ず確認してくださいね。
私立高校の教員として働き始めてから、より心の余裕を持って生徒と接することができ、本来自分の挑戦したかった教育に向き合う時間も増えました。
本記事を読んだみなさんが、自分らしく教育の世界で輝けることを心から祈っています。