高齢者の認知症予防とは?今からできる対策5選と役立つ趣味を解説

「高齢になってきた親の認知症が心配」

「もの忘れが増えてきた?認知症にならずに、まだまだ元気に過ごしてほしい」

このような不安や悩みを抱えていませんか?

年齢を重ねると忘れっぽくなったり、疲れやすくなったりと心配することも増えてきますよね。認知機能の低下も加齢にともなって低下するひとつの症状です。

わたしも高齢の祖母から「もの忘れが増えた」といわれたときは、たいへん心配しました。

この記事では、理学療法士歴9年の筆者が今からできる認知症予防策や、認知症予防に役立つ趣味について詳しく解説します。

本記事を最後まで読むことで、高齢者の認知症を予防する取り組みがわかり、認知症を心配する家族は心にゆとりをもてますよ。

目次

今からできる!高齢者の認知症予防策5選

今からできる、高齢者の認知症予防策を5つ紹介します。

認知症は生活習慣と深く関係しており、誰もがかかる可能性のある病気です。

厚生労働省研究班の報告によると2040年には、65歳以上の高齢者6.7人に1人(高齢者のおよそ15%)が認知症になると推計されています。

認知症の発症や進行を遅らせるために、日々の生活習慣から見直してください。予防は無理なく継続することが大切です。

今できることからはじめていきましょう。

認知症予防策について、ひとつずつ解説します。

①バランスのよい食事をする

バランスのよい食事をすると生活習慣病が予防でき、認知症予防にもつながります。

バランスのよい食事とは、主食・主菜・副菜をそろえて五大栄養素(タンパク質・脂質・炭水化物・ビタミン・ミネラル)をとることです。

炭水化物を主食とする高カロリー食・低タンパク質食・低脂肪食は、認知症のリスクを高める傾向にあるため控えましょう。

認知症予防には、以下の観点から「地中海食」が推奨されています。

  • 果物や野菜をつかう
  • 肉ではなく魚を多くつかう
  • オリーブオイルをつかう
  • 豆類や全粒粉など未精製の穀物をつかう
  • 食事と一緒に適量のワインを飲む

日本人になじみのある和食も、一汁三菜を意識すると栄養は偏りづらいです。

特定の食べ物に偏らず、献立に旬のものを取り入れるなど工夫してみてください。

「よくかむ」ことは、認知症の原因物質をおさえる効果があります。

栄養バランスをとることに加えて、よくかむことも意識して食事を楽しんでくださいね。 

②生活リズムを整える

生活リズムを整え、認知症予防のために質のよい睡眠を習慣化しましょう。

認知症の中で約半数を占める「アルツハイマー型認知症」は、脳内にアミロイドβやタウタンパクという物質がたまることで進行します。

アミロイドβは、睡眠中に脳内から排出されるため「質のよい睡眠」が欠かせません。

質のよい睡眠をとるために気をつけたいポイントは以下です。

  • 30分以上は昼寝をしない
  • 寝床に8時間以上入らない
  • 日中は活動的に体を動かす
  • 寝る前に睡眠の妨げとなることは避ける
  • リラックスしやすいよう室温や湿度、照明を調整する

起床時には日光を浴び、日中と夜間の行動にメリハリをつけて、規則正しい生活を習慣化しましょう。

③家事をする

家事をしている高齢者は、していない人に比べて認知機能が高いといわれています。

家事は「この順番で掃除をしよう」「どの食材が冷蔵庫に残っているか」と状況を考えて行動することで記憶力や集中力、注意力向上などにつながっているためです。

また、立ち座りや家中を動き回ることで足腰も鍛えられ、転倒予防にも役立つでしょう。

患者さんには、「できることは自分でする」家族には、「本人ができることまで支援しすぎない」ことを伝えています。家族が思っているより患者さんの能力は高いことが多いですよ。

家事は負担の軽いものから重いものまでさまざまです。

負担の軽い家事負担の重い家事
洗濯
ベッドメイク
洗濯物干し
アイロンがけ
片付け
料理
掃除機かけ
窓拭き
床掃除
ベッドシーツの交換
家具の移動
野菜や花を育てる

負担の重さに関わらず家事をすることが大切なので、家事が苦手な人は負担の軽い家事を毎日行ってみましょう。

バランスのよい食事づくりも取り入れれば一石二鳥ですね。

④運動習慣を身につける

運動は認知症予防に有効で、定期的な運動を積極的に取り入れることが大切です。

運動をすると脳の血流が増え、認知症の原因となるアミロイドβの蓄積をおさえる効果があります。

また、新潟大学脳研究所の能研コラムでは運動をすることが生活習慣病の予防や、記憶に関係する海馬の容積を増やすと報告されています。

運動は認知症予防において重要な役割をになっていますね。

運動頻度は以下を参考にしてください。

  • 1日30分以上(10分を3回に分けてもよい)
  • 週3回以上
  • 1週間の運動合計時間が150分以上

運動中に簡単な認知課題を組み合わせるとさらに効果的です。

たとえば、「ウォーキングしながらしりとりをする」「筋力トレーニングしながら引き算をする」などを運動に取り入れてみてください。

わたしは、運動を習慣化するためにあらかじめ日程を決めています。祖母に決めてもらうこともあり、スケジュール管理も認知症予防に役立っています。

グラウンド・ゴルフ|運動と交流が両立できる

グラウンド・ゴルフは運動と社会的な交流ができるスポーツであり、認知症予防に効果的です。

ルールを覚えて実践すると記憶力や判断力も向上し、運動によって脳の血流が増えて脳が活性化します。

ほかにも、グラウンド・ゴルフには以下のような認知症に役立つ要素が多く含まれています。

  • 体をひねる
  • バランスを保つ
  • 道具をつかう
  • 力を加減する
  • 交流の機会になる

地域行事として行われることも多く、趣味としてはじめる人も多いです。

運動は仲間がいると継続しやすいので、趣味のひとつとしてグラウンド・ゴルフに参加してみてはいかがでしょうか。

旅行|運動と知的好奇心を同時に刺激できる

旅行は計画段階から脳を刺激し、新しい体験や運動が認知症予防に効果的です。

普段とは違う場所に出かけることで知的好奇心が刺激され、脳を活性化します。

旅行が認知症予防にもたらす効果」の研究結果では、旅行頻度が多いほど知的好奇心が満たされ、幸福度が高まることで認知症の発症リスクを低下させると解明されました。

近場の日帰り旅行でも知的好奇心が刺激され、予防効果が得られます。

移動が大変な場合は、車で移動するなど家族や友人に頼り、負担を減らせるような工夫をしてみるとよいですね。

わたしの祖母も疲れやすいので、時間にゆとりのある計画を立てるようにしています。

家族旅行を年に1回の恒例行事にするなど、定期的に旅行を取り入れ、楽しみながら脳を刺激しましょう。

⑤外に出て人と関わる

服装やおしゃれに気を遣い、外に出て人と関わる機会をもつことも、認知機能を保つはたらきをしてくれます。

国立長寿医療研究センターの研究によると、認知症発症リスクが低下する要因として以下の5つがあると報告されています。

  • 配偶者がいる
  • 同居家族と支援のやり取りがある
  • 友人との交流がある
  • 地域のグループ活動に参加している
  • 何らかの就労をしている

たとえば「地域のボランティアに参加する」「趣味や習い事をする」「地域のサロンに参加する」など、人と交流できる機会は多くありますね。

わたしの祖母は、地域の体操教室に通っています。
体操後には仲間と食事に行くなど行動範囲も広がり、活動的に過ごすことが認知症予防につながっています。

厚生労働省の「認知症ケア法−認知症の理解」では、人と交流がない人は認知症発症リスクが8倍になるという記述もあります。

さまざまな場所で交流ができるよう積極的に動きましょう。

高齢者が習慣化したい「認知症予防の10カ条」

公益財団法人 認知症予防財団が提唱した認知症予防の10カ条」は、認知症を予防するために意識したいことがわかりやすくまとめられています。

すべて同時に改善しようとがんばりすぎず、無理のない範囲で継続することを意識してください。

ひとつずつ確認しましょう。

【認知症 予防の10カ条】

  1. 塩分と動物性脂肪を控えたバランスのよい食事を
  2. 適度に運動を行い足腰を丈夫に
  3. 深酒とタバコはやめて規則正しい生活を
  4. 生活習慣病(高血圧、肥満など)の予防・早期発見・治療を
  5. 転倒に気をつけよう 頭の打撲は認知症を招く
  6. 興味と好奇心をもつように
  7. 考えをまとめて表現する習慣を
  8. こまやかな気配りをしたよい付き合いを
  9. いつも若々しくおしゃれ心を忘れずに
  10. くよくよしないで明るい気分で生活を

引用:公益財団法人 認知症予防財団ホームページ

紙などに書き写して目の届くところに貼っておくなど、意識しやすいよう工夫してみるのもいいですね。

【認知症予防の10カ条】にある「5.転倒に気をつけよう」は、わたしも声かけすることが多いです。
転倒予防のために転ばない体づくりや、転ばない環境づくりなどを患者さんや家族にアドバイスしています。

「認知症予防の10カ条」は認知症を予防するうえで非常に大切な行動や考えです。

日々の生活に取り入れて習慣化し、健康的な生活を送りましょう。

高齢者の「加齢によるもの忘れ」と「認知症」は違う

高齢者の「加齢によるもの忘れ」と「認知症」は違います。

「加齢によるもの忘れ」は自然な老化現象ですが、「認知症」は脳に障害が出る病気です。

2つの違いを表にまとめたので、参考にしてください。

加齢によるもの忘れ認知症
忘れ方体験したことは覚えているが、一部を忘れる
(例:何を食べたか忘れる)
体験したことのすべてを忘れる(例:食べたこと自体を忘れる)
自覚忘れた自覚がある忘れている自覚がない
日常生活大きな影響はない大きな影響あり
進行悪化はみられない悪化していく
そのほかの症状
      
日付や時間、季節感がわからなくなる
なれた場所で迷子になる
できていたことができなくなる

認知症は「早期発見」「早期予防」が大切です。

「認知症かな?」と思ったときは、はやめに専門機関を受診してくださいね。

高齢者の認知症予防は重要|「はやくはじめる」ほど効果的

認知症は生活習慣病と深い関わりがあるため、将来のためにも生活習慣を見直すなどの予防は「はやくはじめる」ことが重要です。

認知症は時間の経過とともに症状が進行します。

軽度認知障害(MCI)は、認知機能は低下していても日常生活に影響のない状態です。

国立長寿医療研究センターの「あたまとからだを元気にするMCIハンドブック」によると、はやめの対策でおよそ16〜41%の人は正常な状態に戻ったり、進行を遅らせたりできることがわかっています。

入院している患者さんのなかには、認知症が進行して家族の介護負担が増え、生活に支障が出た人もいました。

大切な家族が健康に過ごせるように、年齢関係なくはやめに対策をはじめることが大切です。

早期の段階でやる気がでない場合は、お互いに声をかけ合い、1日でもはやく行動に移しましょう。

【実体験】理学療法士おすすめ!家族とする高齢者の認知症予防策3選

大勢で楽しめる活動は自然と脳を活性化し、認知症予防に効果的です。

もの忘れの自覚がない場合、認知症の予防策を続けることが負担に感じるときもありますよね。

そのようなときは、家族と一緒に楽しめる遊びを取り入れてみましょう。

家族で楽しみながら認知症予防に取り組める遊びを3つ紹介します。

道具を必要とするゲームもあります。環境に合わせたゲームで参加者全員の脳を鍛えていきましょう!

①ボードゲームで戦略を立て脳の活性化をする

ボードゲームは相手に勝つための戦略を練るなど、頭が働くことで脳の活性化を促します。

ボードゲームにはさまざまな種類があるため、幅広い年齢層に対応できます。

「ルールを覚える」「コミュニケーションをとる」ことも記憶力や注意力向上につながり、認知症予防に効果的です。

わたしは家族で集まることが多いため、ボードゲームが大活躍しています。
はじめてのゲームには消極的な祖母ですが、二人一組になって気軽に参加できるようにしています。

囲碁や将棋など定番のゲームもよいですが、新しいゲームでさらに脳を刺激したい人にはパズルボードゲームの「ウボンゴ」がおすすめです。

ウボンゴの簡単な説明
  • 1〜4人まで対戦できる
  • 対象年齢は8歳以上
  • 制限時間を気にしながら書かれた枠にピースをはめてパズルを完成させる
  • 最初に完成させた人が「ウボンゴ」とさけび宝石を獲得できる 
  • 9ラウンドあり、いちばん価値のある宝石を集めた人が勝ち

スピード感が重要で、思考力や判断力、集中力などが鍛えられます。

「ウボンゴ」という聞きなれない言葉をさけぶことで笑いもうまれそうですね。

ぜひ家族で楽しみながら悩み・考えて、脳を鍛えてください。

②クイズゲームで記憶力や思考力を鍛える

道具を必要とせずに、難易度や問題の出し方を変えられるクイズゲームもおすすめです。

クイズゲームは記憶力や集中力、思考力など認知機能を維持できるほか、人数の制限なく大勢で楽しめます。

たとえば、都道府県クイズや歴史・地理クイズは勉強中の学生も一緒に参加できるため、子どもから大人まで楽しめるでしょう。

わたしは、ノルディック・ウォークとクイズを組み合わせています。
登山で使用するような2本のポールをつかうため、全身運動が効率よく行えます。
転倒も予防でき、ストレッチや体操にも活用できる便利アイテムですよ!

わからない問題があると学習意欲も刺激され、認知症予防にはたいへん効果的なゲームです。

難易度を調整しながら家族で脳トレを楽しみましょう!

③eスポーツで楽しみながら認知機能を鍛える

eスポーツは認知症予防に有効であるとシニア世代にも注目されています。

eスポーツとは「Electronic Sports(エレクトロニック・スポーツ)」の略語で、コンピューターゲームやビデオゲームをつかった対戦をスポーツ競技として捉えた名称です。

新しいことへの挑戦は脳への刺激が高く、楽しみながら実施することで脳が活性化されます。

誰かと一緒に対戦することが社会参加にもつながりますね。

たとえば「ぷよぷよ」では、色や形を目や耳で見分けたり、つなげたりと自分で考えてコントローラーを操作することで脳が刺激されます。

指先だけではなく体の動きと連動した操作が必要なゲームもあり、健康維持にも効果的です。

我が家では、体を動かすスポーツゲームをしています。
祖母もはじめた頃より体力がつき、長く楽しめるようになっています。
簡単な操作方法を覚え、ふらつく場面も減りました!

eスポーツは若者向けのイメージをもつ人も多いと思いますので、家族の声かけや協力が必要です。

楽しむことをいちばんに考えて、家族でチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

高齢者の認知症予防に役立つおすすめの趣味3選

高齢者が趣味をもつことは認知症予防にたいへん効果的です。

趣味の種類が多くなるほど、認知症発症のリスクは低くなるといわれています。

認知症予防に役立つおすすめの趣味を3つ紹介します。

今回紹介する趣味は1人でも手軽にできます。

ぜひ気になったものからはじめてみてください。

①写真撮影|創造性を刺激して脳を鍛える

写真撮影は年齢や場所に関係なくいつでもはじめられ、脳の機能を保ちます。

撮影時に「この構図で撮りたい」「この季節感を撮りたい」「この瞬間を残したい」などと考えることで、創造性や集中力、好奇心を高めます。

とくに記憶に関係する海馬を刺激するといわれており、記憶力向上にも有効です。

外出ができなくても、窓から見える景色や庭の木々、家族の様子などを撮影するのもよいですね。

「写真を撮ってほしい」と頼まれることで得られる幸福感や達成感も、認知症予防になります。ぜひ遠慮せずにお願いしてみてくださいね。

②日記|手書きで脳を活性化する

日記は「覚えておく」「保持する」「思い出す」能力が必要で、脳を広範囲にわたって刺激します。

認知症予防には「手書き」が有効で、日記も継続することが大切です。

日記をつけるポイント
  • 楽しい思い出は、記憶をつかさどる海馬のはたらきが活発になるため、ポジティブな内容にする
  • ネガティブな内容の場合は前向きな内容でおわる
継続するポイント
  • 書く内容を決めておく(3行日記や5行日記)
  • すぐ手の届く場所に準備しておく(20秒以内)

家族での交換日記もおすすめです。

大切な思い出は日記につづって、短期記憶から長期記憶へ変えていきましょう。

③園芸|心と体を癒して五感を刺激する

五感を刺激してストレスを軽減する園芸は認知症予防に効果的です。

植物の美しさや香りによる癒しに加えて、立ち座りやものを運ぶなど運動量も多いため脳を活性化します。

枯れた葉をハサミできるなど指先をつかった細かい動きや、両手をつかった作業で握力を維持することも認知症予防になりますよ。

庭がない場合は、鉢植えの植物を育てるだけでも同様の効果が期待できます。

育てた植物を撮影して記録するのも趣味が増えてよいですね。

育てやすい植物や、自分が世話をしたいと思う植物を選んでもらい、園芸を楽しみながら認知症予防に取り組みましょう。

まとめ|人生100年時代!高齢者の認知症を予防して健康に過ごそう

認知症は誰にでも起こりうる病気であり、はやめの対策が重要です。

家族全員が将来を見据えて認知症を予防することで、高齢者も家族も元気に楽しく過ごせるようになります。

まずは、今できる予防策や趣味を生活に取り入れて、日々の生活習慣を改善することが大切です。

最後に認知症予防のポイントを振り返りましょう。

  • バランスのよい食事をする
  • 生活リズムを整えて質のよい睡眠をとる
  • 家事をする
  • 運動習慣を身につける
  • 外に出て人と交流する
  • できるだけ多くの趣味をもつ

家族と一緒に対策をすることで交流が増え、きずなも深まりますね。

高齢者の認知症を予防することで、高齢者は自分らしく余暇を満喫でき、家族もこれからの長い人生を安心して楽しめます。

家族で早期から対策をはじめて健康的に過ごしましょう!

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