「クレームがきっかけの離職を減らしたい」
「人材教育に有益なヒントが欲しい」
このような悩みを抱えていませんか。
サービス業のなかでも、離職率が高いと有名なコールセンター業界。
ノルマやクレーム対応など、社員に任される業務負担の大きさは、離職率を高める理由のひとつです。
本記事では、官公庁や金融系コールセンターにて、元オペレーターの筆者が「お客様対応のコツ」について解説。
この記事をお読みいただくと、顧客満足度の高い「お客様対応」について理解でき、人材教育に必要なヒントを得られます。
企業として、社員への研修やサポート体制に注力するなら、従業員の負担を軽減でき、離職率を下げる足がかりになりますので、ぜひ最後までお読みください!
コールセンターのクレーム対応が上手い人|特徴3選
企業に提供されたサービスの品質が低いと、お客様は不満をもちクレームに発展します。
お客様が感情的になってしまうのは、「サービスや商品に期待している気持ちを裏切られた」と感じるからです。
電話対応では、お客様の怒声とともに苦情を受けることもあるため、クレームと聞くだけで、無意識に身構えてしまう人も多いのではないでしょうか。
クレームはネガティブなイメージをもつ人も多いですが、企業としては、お客様からの貴重なニーズを探る絶好のチャンスです。
オペレーターは焦らず上手に、お客様の要望を汲み取り、適切なクレーム対応をする必要がありますので、以下のクレーム対応が上手な人の特徴をおさえていきましょう。
それぞれ、解説していきます。
相手の話を聞いて寄り添っている
クレーム対応が上手な人は、お客様に寄り添った行動を心がけています。
たとえば、お客様が電話ではなく「チャットやメールでの対話を希望している」なら、オペレーターは企業として可能な範囲で、お客様の希望に応えます。
また、お客様に共感していることがわかるように、お客様を否定する言葉は用いません。
二次クレームに注意しつつ、相手の疑問や不満を受け止めて、慎重に状況把握に努めていきます。
そして優秀なオペレーターは、適度に復唱しながらお話を聴くことで、お客様が正しく理解できているかを確認します。
このようにお客様によりそい、大切にすることで、企業としてできる限りの解決策を探っていくのです。
電話でも相手が目の前にいるつもりで話している
クレーム対応が上手い人は、相手が目の前にいるつもりで話しています。
電話越しで表情は見えなくとも、オペレーターの態度は声色でお客様に伝わります。
接客の基本は「明るく元気よく」を意識することですが、コールセンターでも心がけるポイントは変わりません。
くわえてクレーム対応が上手い人は、電話対応中の表情を確認するために、デスクの上に鏡を置くなど工夫しています。
また、お客様の年齢や話す速度に合わせて、ゆっくり話すこともあれば、聞き取りやすいように、あえて低い声で案内する場合もあります。
このようなこまやかな対応は、お客様としても心地よく感じることでしょう。
自分が怒られているわけではないと理解している
クレーム対応が上手い人は、お客様から罵詈雑言を浴びせられても、「自分が怒られているわけではない」と理解しているため、冷静さを保てます。
しかし、相手の激しい怒りを受け止めつつも、適切にお客様対応するのは、簡単ではありません。お客様の気持ちに向き合い、共感していくうちに、相手が冷静さを取り戻す場合もあるでしょう。
クレームの矛先がオペレーター自身でないと理解することは、オペレーターのメンタルを守るうえでも大切なポイントなのです。
コールセンターのクレーム対応|お客様対応のコツ
コールセンターでは、受信・発信業務に限らず、突発的なクレーム対応を求められる場合があります。
お客様対応のコツを活用して、クレームに備えつつ、お客様から「ありがとう」と言ってもらえるような電話対応を目指しましょう。
「お客様対応のコツ」は以下です。
ひとつずつ、解説していきます。
クレーム対応のコツ①|よく使う言い回しを覚えておく
クッション言葉を使った言い回しは、コールセンターでよく使用されています。
クッションことば
会話の間に挟んでコミュニケーションを円滑にする言葉の総称。ビジネス上のやりとりなどでよく用いられる。例として「恐れ入りますが」「失礼ですが」などが挙げられることが多い。
引用:weblio辞書
クッション言葉は、通常の対応だけではなく、クレームの時にも役に立ちます。
オペレーターは、お客様に質問しづらい場面であっても、問題解決に必要であれば、お客様から情報を共有してもらわなければいけません。
その際に、「誠に恐れ入りますが」と前置きして本題に入ることで、お客様からスムーズに情報を提供してもらえるのです。
すぐに返答できるよう、よく使う言い回しを覚えておきましょう。
クレーム対応のコツ②|姿勢や声のトーンを意識する
お客様から好んでもらえるオペレーターは、姿勢や声のトーンを意識しています。
電話越しでは「どんな姿勢で対応しても伝わらない」と思ってしまいがちですが、実際にはオペレーターの姿勢が崩れていると、オペレーターの声はこもって聞こえます。
声がこもってしまうと聞き取りづらく、場合によっては案内ミスを招く恐れもあるため、注意しましょう。
謝罪する際には眉を下げて声のトーンをおさえることで、問題の深刻さを表現します。
そうすることで、お客様はオペレーターから「共感してもらった」と感じ、結果として顧客満足度の向上につながります。
お客様の立場になって考え、「このオペレーターなら安心して話せる」と感じてもらえる対応を心がけましょう。
クレーム対応のコツ③|内容を把握して解決策を提案する
クレームのなかには、お客様が勘違いして問い合わせをしてくるケースもあります。
適切に対応するためには、正確な状況把握が必要です。
クレーム対応時には相手の話に共感しつつ、「そうだったのですね」など相づちを打ち、全容把握に努めましょう。
お客様が問い合わせをした経緯や、「どのように思ったか」などを聞くことでクレームになった原因が見つかります。
また、もし途中でお客様の勘違いに気づいたとしても、話をさえぎらないように注意しましょう。
話の腰を折ってしまうと、二次クレームにつながる恐れがあるためです。
オペレーター自身で判断できない場合には、上長に内容を確認するなどして、解決策を提案しましょう。
クレーム対応のコツ④|電話を切る前にお詫びと感謝の言葉を伝える
クレームの電話を切る前には必ず、お客様へお詫びと感謝の言葉を伝えましょう。
企業はお客様の意見を通して、サービス改善点を見つけ、品質向上に役立てます。
現代では、チャットツールのみで問題を解決できる場合も多く、「できる限り電話したくない」と考えるお客様もいます。
コールセンターに電話しても「ただいま混み合っています」というアナウンスが流れ、何分間も待たされたという方も、多いことでしょう。
そのため電話をかけるのは、お客様からして面倒で避けたい行動です。
謝罪はもちろんのこと、貴重なご意見を伝えてくれたことに感謝し、対応を終えましょう。
クレーム対応のコツ⑤|上司に対応を代わってもらう
クレームによっては、イレギュラーの対応が必要なケースもあります。
「自分だけでは手に負えない」と判断した際は、必ず上司に相談し、必要に応じて案件を巻き取ってもらいましょう。
- できる限り、お客様の状況や用件を聞き取っておく
- 折り返しの連絡先や、都合の良い時間帯などをヒアリングしておく
- 自分はどのような回答したか、顧客の様子などもあわせて上司に共有する
また次回からオペレーターひとりで対応できるように、メモをのこして対応方法を記録します。
クレーム対応後は、上司に対応を代わってもらったお礼を伝えましょう。
要注意!言ってはいけないNGワード
お客様対応する際に、言ってはいけないNGワードがあります。
NGワードは、不必要なクレームを招くだけではなく、企業のイメージを損なう恐れがあります。
加えて誤った敬語も、お客様に不信感を抱かせるため、使わないように気をつけましょう。
通話環境によっては、お客様の声が聞き取りづらいこともあります。
その際には、「はい?」「え?」など、失礼な聞き返しをせず「お電話が遠いようでございます」など、丁寧に聞き返すように心がけます。
NGワードや誤った敬語を言わないように注意して、オペレーターの対応品質を磨きましょう。
クレーム減少に向けて|企業として対応するポイント
コールセンター業界では、クレーム対応で体調不良になり、離職してしまう社員が後を絶ちません。
クレームの発生件数を減らすことで、従業員の負担を軽減でき、定職率も高まります。
クレーム減少に向けて、企業として対応すべきポイントは以下の通りです。
「クレームは宝の山」と言われるほど、改善のヒントを得られますが、労働力を失ってしまっては本末転倒です。
企業としてクレームのメリットを活かしつつ、従業員を守る仕組みを構築しましょう。
クレーム対応専用のマニュアルを作成する
均一化したお客様対応を目指すために、クレーム専用のマニュアルを作成しましょう。
想定可能なクレームや、これまでの事例をもとに対応方法をまとめます。
- クレーム対応についての心構え
- クレーム状況別に対応方法
- NGワードの一覧
- 良い対応例やトークスクリプト
- カスタマーハラスメントの判断基準と対応方法
「良い対応例」は、動画形式で内容をまとめると、従業員がイメーしやすいでしょう。
カスタマーハラスメントとは、顧客が企業に対して、理不尽な要求・嫌がらせをする行為のことです。
具体的なカスタマーハラスメントの判断基準は、企業に委ねられています。
クレーム対応には一貫した対応が求められるため、事前に対策を立て、定期的にマニュアルを改定しましょう。
参考:厚生労働省「カスタマーハラスメント対策マニュアル」PDF
オペレーター教育に注力する
オペレーター教育に注力するメリットは、クレーム減少だけではありません。
優秀な従業員は、クレーム対応において迅速に対処できるため、コールセンターとしての生産性の向上も期待できるためです。
- ビジネスマナーを鍛える
- ロールプレイング研修を行う
- 社員にクレーム対応講座を受講させる
ロールプレイング研修とは、業務中に起こり得る場面を想定して社員同士、もしくは上司と模擬練習を行う研修方法です。よく使う言い回しなどを使い、スムーズに対応できるまで練習を重ねます。
また、クレーム対応に不安を抱えている新人社員には、「クレーム対応講座」を受講させることで、不安を軽減できます。
オペレーター教育に注力し、クレーム対策をしましょう。
クレームを分析して品質改善に役立てる
クレーム原因やお客様の声を分析することは、クレーム減少・再発防止に役立ちます。
さらには、自社商品やサービス品質を改良するヒントも得られます。
お客様との対話音声を録音して、VOC分析に役立てましょう。
VOCとは「Voice of Customer」の略で、お客様の声を意味します。
お客様の意見をヒントに、商品やサービスの品質向上に役立てる目的があります。
たとえば、「商品の味付けが濃い」などの声は、薄い味付けの商品を開発するヒントとして活用できるでしょう。
さらには、お客様が誤解している場合のクレームは、「わかりやすい案内になっているか」など、サービス内容を見直すきっかけになるでしょう。
自社サイトに「お問い合わせフォーム」や「よくある質問」を設置する
電話の件数を減らすことは、クレーム減少にもつながります。
そのため、お客様が電話で問い合わせをせずとも、疑問や問題を解決できる仕組みづくりが有効です。
自社サイトに「お問い合わせフォーム」や「よくある質問ページ」がなければ設置をオススメします。
「お問い合わせフォーム」は、チャットやメールで連絡できるようにしておき、必要に応じてAIの導入も検討しましょう。
また「よくある質問」は、お客様対応で案内できるように、業務マニュアルと連動させるとよいでしょう。
オペレーターから案内された、よくある質問ページを確認することで、お客様の安心感も向上します。
このような取り組みは、企業や従業員だけではなく、お客様にとってもメリットになりますので積極的に導入していきましょう。
クレーム対応代行サービスを使う
専門業者にクレーム対応を依頼することで、クレームを減少させるという手もあります。
クレーム代行サービスは、企業あてのクレームを代行してくれるサービスのことです。
ですが一次受けプランでは、お客様の話を聞き取りしてくれるものの、クレーム解決は自社で行う必要がありますので注意しましょう。
二次受けプランでは、クレーム解決まで対応してもらえる分費用もかさみます。
クレーム代行サービス3選 | 特徴 |
CUBE | 一次受けのみ対応サービス保証制度で1ヶ月は全額返金 |
インテグレス | 一次・二次受け対応24時間対応で8000件の実績あり |
テルシンク24 | 一次・二次受け対応365日24時間対応可能 |
自社に合ったプランを選択し、社内対応するクレームを減少しましょう。
【私のしくじり体験談】いい加減な態度はお客様に伝わると痛感した話
筆者が新人オペレーターだったときの話です。
研修を終えた筆者は、先輩から「クレームは落書きしながらの対応でいい」というアドバイスをもらいました。
今となっては、メンタルを保つ「言葉のアヤだ」と理解できますが、当時の筆者は初めてのクレームにもかかわらず、落書きしながらクレーム対応をしていました。
結果、的を射た返答を用意できずお客様の怒りは高まっていきます。
通話時間が長引き慌ててお客様に寄り添いましたが、気持ちは伝わりません。
最終的に泣きながら謝罪したことで、お客様は「それでいいんだよ」と納得した様子で対応を終えました。
何年も前の話ですが、「最初から真摯な対応していたらよかった」と後悔しています。
このように、電話越しと言えど相手には感情や対応の態度が言動や返答から伝わりますので、親切丁寧な対応を心がけましょう。
まとめ|オペレーター育成は企業のイメージアップにつながる
優秀なオペレーターはクレームにおいて、円滑にお客様対応できます。
お客様に寄り添った対応を心がけることで、企業の商品やサービスのリピート率も上昇し、最終的には企業のイメージアップにつながるでしょう。
そのため、オペレーター育成は、企業のイメージを向上させるうえで欠かせません。
クレーム対応が上手な人の特徴や、「お客様対応においてのコツ」を研修に取り入れることで、優秀なオペレーターを育成できます。企業や従業員だけではなく、お客様も笑顔になれるオペレーター教育に励みましょう。